「エロシーン習作」

「今日は有紀ちゃんが上に乗ってよ」
そう淳平が言いだしたのは、ベッドに縺れ込んで舌を絡ませた後だ。
性感帯である咥内を、淳平の舌先で執拗に嬲られて息も絶え絶えの有紀は、耳元を食みながら吐息と共に流し込まれた要求 にぞわりと肌を粟立てた。
「何を、仰ってるんですか」
身を捩って、首筋に舌を這わす淳平を咎めるように睨む。男は挑発的に目を細めて薄く笑った。
「騎乗位って知らない?」
「そういう話じゃないです」
口付けに濡れて腫れた唇を尖らせる有紀。その紅さに誘われて、淳平はもう一度それを奪った。唇の柔らかさを楽しんで、唾液を交換して。舌先で上顎をなぞれば、有紀の肩と巻き毛が揺れて淡い香りを振り撒く。有紀は与えられる口付けを素直に受け入れて、淳平の後頭部に手を伸ばした。切り揃えて撫でつけられた短髪に有紀の指先が埋まる。愛らしく積極的な有紀の行動に気を良くした淳平は、更に濃厚に舌を差し出して絡める。
そのまま有紀の背中を撫でて、腰を掴んで掌で愛撫した。
「俺は、してくたれら嬉しいけどなぁ。駄目?」
濃い口付けの後、淳平はころりと態度を変えてねだる子供のような瞳で有紀の顔を覗き込んだ。無邪気な目に射抜かれて、有紀は思わず言葉に詰まる。
恋人にお願いをされて、嫌だと言えるような性分ではなかった。

充てがった淳平自身から震えが伝わって、有紀の腰が甘く揺れた。余裕たっぷりで有紀を見上げる男を睨み付けて、その腹筋に両手を付いて慎重に腰を落としていく。ゆっくりとした挿入に内腿がぷるぷると震える。つぅっと汗が流れ落ちた。「ん………っ」
有紀の唇から艶っぽく濡れた吐息が零れた。とろとろに蕩けた媚肉が、怒張した竿の根元まで難なく呑み込んでいく。腰の降下を終え、震える呼吸を整える有紀を、淳平は下から舐めるように見上げた。
「簡単に挿入ったねぇ」
揶揄するような淳平の言葉に、有紀の肩がぴくりと跳ねる。首を振って否定した有紀だったが、痛みもなくぬるりと飲み込んだのは本人が一番理解していた。淳平に丁寧に仕込まれた後孔は、この滾った巨根にあわせて調教されていた。淳平と肌を重ねるまで受け身の快楽を知らなかった有紀の身体は、今ではすっかり後孔で感じるように作り変えられている。
挿入だけで快楽を獲てしまう自分を見ないふりをして、有紀は手を付いて居る淳平の腹筋を軽く叩いた。大の男の体重を掛けてもびくともしないそれは、淳平の身体がしっかり鍛えられている証だ。
ぺちぺちと間抜けな音が立つ。
「ちゃんと硬い…ですね。ビール腹にはまだ遠いようで」
虚勢を掻き集めて。意趣返しといわんばかりに有紀は不敵な表情を作って、淳平を見下ろした。淳平は有紀の強気な視線と、自分の牡を飲み込んで喜びの涙を流す有紀の昂ぶりとを交互に見て、ニヤリと嗤った。
「ふぅん?言うねぇ有紀ちゃん。硬いのは腹筋だけじゃねーぜ」
その言葉と共に有紀の腰を両手で掴んで、下から思い切り突き上げた。途端に有紀の身体が跳ねる。一瞬で表情を崩した有紀に構わず、そのまま滅茶苦茶に突き立てた。
「やっ、あっ、あぁっ!淳平さ、ぁ!」
「誰がビール腹だって?」
一回りも年の差のある二人だから、淳平が冗談で「おっさん」を自称することもあるし、有紀がからかうこともあった。しかし、あくまで冗談だった。男にしては細く華奢な体躯を持つ有紀よりも、スポーツを嗜む淳平の方が身体能力も体力も上手だ。
有り余る雄の力で責め立てられて有紀が悲鳴に近い声を上げる。耐えるように指先に力を籠めて、ぐっと淳平の肌に爪を立てた。それを認めた淳平が有紀の手首を掴んで身体ごと自身に引き寄せる。強引に叩き付けられて、また淳平の牡がまた奥まで蕩けた肉に埋まる。
「ちょ、も、うっ…だめですっ、やっ!」
「んー?何が?」
「ごめんなさ…、謝りますからぁっ!やっ、そんなっ、あぁっ!」
「悪いコト言った自覚はあるんだ?」
くすりと冷笑と共に吐かれた声に、ひぃと有紀の喉が鳴った。淳平は有紀の後孔を犯したまま、張り詰めて震える有紀自身まで握り込んだ。悲鳴を愉しむように、淳平の節の目立つ指が熱く腫れ上がった有紀の昂ぶりを弄ぶ。
「すごい眺めだよ、有紀」
男の欲望に濡れた声に、有紀は自身の状態を突き付けられたようで肌を震わせた。淳平に跨って脚を開いて牡を飲み込み、さらにぐちゃぐちゃに雫を垂らして悦んでいる自分のモノまで淳平の手の内だ。酷い羞恥と、内から外から容赦無く与えられる性感とで、如何にかなってしまいそうだ。
「淳平さぁんっ、も、ぁあっ、だ、めっ!」
激しい波に溺れる有紀の、潤んだ瞳の淵に雫が光る。ぎゅっと潜められた眉根。何度も噛み締められた唇が、熟した果実のように震えている。口を開くたびに耐えきれぬ快感に押されて、有紀はほとんど言葉にならない声で艶っぽく啼いた。それに嗜虐心を煽られた淳平は、手の中の有紀自身の、蜜の湧き出す尖端の割れ目をぐっと押した。途端にぎゅうぎゅうと淳平自身を締め付けていた秘処が痙攣する。
「有紀ちゃんの減らず口は何処に行ったのかなぁ?」
「やっ、ぁあッ!淳平さ、ぁ、っふ!も、だ…めぇっっ!!
容赦無く性感帯を突き上げられて、張り詰めた剛直で内壁を抉られる。
有紀はほとんど痙攣しながら、限界を迎えて精を吐き出した。後孔を突き上げる牡に押し出されるように、勢いなくどろりと零れ落ちる白濁液が、淳平の腹と結合部を汚していく。
淳平は一度動きを止めて、男性器への刺激でなく、後孔の性感帯で達してしまった有紀をまじまじと眺めた。真っ赤に染まった顔の濡れた瞳、ぽかんと薄く開いた唇の端から唾液が零れ落ちている。淳平は嘲笑うかのように有紀の吐き出した白濁に触れて指先に絡めた。
「あーあ。変態」
まだ半分硬さを残した有紀の燻りに白濁液を塗り付けて、ぬめりを利用して抜きたてる。達したばかりの性器を愛撫されて、有紀は身を捩って暴れた。しかし抵抗すればするほど、埋め込まれたままの淳平自身が有紀の内壁を刺激する。
顔を振るたびに、有紀のふわふわの巻き毛がしっとりと汗ばんだ肌に張り付いた。乱れた髪の合間の有紀の瞳が濡れて揺れている。甘いダークブラウンの瞳から、ぽろりと雫がこぼれ落ちた。
「淳平さ…、あんまり意地悪…しないで下さ…い……」
とめどなく溢れる涙が、有紀の紅く染まった目元と頬を濡らす。泣かせてしまうとは、流石にやり過ぎたか……と淳平は苦笑した。

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